9日の14時30分から特別委員会政策研究会が開催された。
案件は先月24日に専門部会から報告のあった「(仮称)松山市がん対策推進条例の制定について」、各会派等に持ち帰り検討した内容が発表された。
この中で私は、専門部会の委員の労苦に敬意を表するとともに、議員提案条例であることから、全議員の理解と意思統一を図ることが大切であると述べた。そのため、拙速に決を採って決めず、話し合いにおいて全議員が納得する全会一致で条例を作るべきと主張した。また、1期目の議員が専門部会委員となったことから政策研究会の役割が理解されていない部分もあり、手続き上の課題があることから専門部会と政策研究会の立場の違いや役割分担についても説明した。
専門部会は採決する場ではなく多様な意見を取りまとめ、まとまらない場合は両論併記で政策委員会に提案し、政策委員会で決定し親会の議会改革特別委員会に最終案を提案し採決を求めることを確認した。どちらにしろ、5月で議員任期が終了することから、今任期中の条例策定には至らないかもしれないが、次期任期の資料とすることもできることから、引き続き研究を続け、最後まで協議を続けようとの意見でまとまった。 尚、専門部会委員で取りまとめられなかった意見も併記した新しい条例案は以下の通りである。
(仮称)松山市がん対策推進条例
(前文)
医療の進歩により、がんは長く付き合う慢性病へとなりつつある。2人に1人が、がんに罹患する可能性を持ち、市民の疾病による死亡の最大原因であるがんに対して、更なる対策が求められている。がんになっても、自分らしく暮らせる、がんと共生できる社会の構築に向け、市民皆が正しい知識を持ち相互に支えあう地域社会を目指し、この条例を制定する。
[解説]
昭和56年以降、我が国の死亡原因の第1位となっている、がんは現在、国民の2人に1人が罹患する国民病と言われる現状ですが、近年は医療の進歩により、6割の方が、がんを乗り越え、共生する時代になりつつあります。本市も同様の状況であり、市民の健康に関する様々な施策の中でも、とりわけ、がん対策が重要な課題であります。食生活や生活習慣等を改善することで、がんの発症リスクを下げ予防となり、また、定期的に検診を受けることで、早期発見、早期治療に繋がり、がんが治癒する可能性が高まります。しかし、現状の市民のがん検診受診率はとても低く、がん予防やがん検診の重要性についての理解が進んでいるとは言い難い状況です。がん予防の取り組み向上や、がん検診の受診率向上、また、がんになっても相互に支え合える地域社会となることを目指し、市民のがんに関する正しい知識・理解が深まるよう努めるとともに、がんになっても、適切な、がん医療やサービスが受けることができる環境を整備することで、すべての市民が自分らしく健康で豊かな社会生活が送れるよう、条例を制定します。
※この規定については、「健康で豊かな生活は、市民すべての願いである。」の文言と「生活習慣の改善による予防やがん検診による早期発見、早期治療に取り組むことで、がんの発症リスクを低下させることや治癒率を高めることも可能となっている。」という文言を入れてはどうかという意見がありました。また、患者団体からは、「がん患者の率直な気持ちとして、『健康で豊かな生活は、市民すべての願いである。』という言葉は、自分たちが否定されているように感じる。」等の意見があります。
(目的)
第1条 この条例は、がんが、市民の生命及び健康にとって重大な課題となっているがんの現状に鑑み、松山市(以下「市」という。)の責務並びに市民、保健医療関係者、事業主の役割等を明らかにするとともに、市のがん対策に関する施策の基本となる事項を定めることにより、がんの予防及び早期発見の推進並びにがん患者及びその家族等(以下「がん患者等」という。)への支援を図ることを目的とする。
[解説]
市民の生命及び健康にとって、がんは重要な課題となっている現状を踏まえ、市及び市議会の責務や市民、保健医療関係者、事業主の役割等を明らかにします。市のがん対策に関する施策の基本的な事項を定めることにより、がんの予防及び早期発見を推進し、がん患者及びその家族等に支援を図ることを定めています。
※この規定については、「健康で豊かな生活は、市民すべての願いである」の文言と、「がん患者及びその家族等の負担を軽減し、安心して暮らせる」という文言を入れてはどうかという意見がありました。また、患者団体からは、「がん患者の率直な気持ちとして、『健康で豊かな生活は、市民すべての願いである』という言葉は、自分たちが否定されているように感じる。」等の意見があります。
(市の責務)
第2条 市は、がん対策に関する施策を総合的に策定し、実施するものとする。
2 市は、国、愛媛県(以下「県」という。)、市民、保健医療関係者、事業主、がん患者等で構成される関係団体と連携を図り、がん対策に関し必要な施策を実施するものとする。
[解説]
市は、がん対策の関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有しており、その際は、国、愛媛県、市議会、市民、保健医療関係者、事業主、がん患者等で構成される関係団体と連携を図り、がん対策に関して必要な施策を実施します。
(市議会の責務)
第3条 市議会は、がん患者をはじめとする市民の声が反映されたがん対策に関する施策が推進されるよう、関係機関等との連携の下にがん対策に取り組むこととする。
[解説]
市議会は、市民の声が反映されたがん対策に関する施策の推進に、市や関係機関等と連携しがん対策に取り組みます。議員提案の条例であり、積極的ながん対策に取り組む姿勢を明文化した。
※この規定については、「『市議会の役割』として規定してはどうか。」、「『議会の責務』の規定は愛媛県の条例にもなく必要ないのではないか。」、「『議会の責務』として規定した方が、議員の提案条例ということや議会が真剣に取り組んでいるということを強く市民に訴えられるのではないか。」という意見がありました。
(市民の役割)
第4条 市民は、喫煙、飲酒、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響等がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払い、積極的にがん検診を受けるよう努めるほか、がん患者に関する理解を深めるよう努めなければならない。
[解説]
市民は、がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に対する主体的な活動に努め、市が実施するがん検診を受診するとともに、がん患者に対し理解を深めることが求められています。
(保健医療関係者の役割)
第5条 保健医療関係者は、がん患者の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切ながん医療を提供するものとする。
2 保健医療関係者は、がん患者等に対し、積極的にこれらの者が必要とするがんに関する情報を提供するものとする。
3 保健医療関係者は、市が実施するがん対策に関する施策に協力し、がんの予防に寄与するよう努めるものとする。
[解説]
1.医師、歯科医師、看護師、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師等の医療関係者は、がん患者が置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切ながん医療を行うものとします。
2.がんに関する情報提供については、すべての保健医療関係者に求めるところではあるが、特に、国が指定する「都道府県がん診療連携拠点病院」、「地域がん診療連携拠点病院」及び愛媛県が指定する「がん診療連携推進病院」においては、その役割として、がん患者及びその家族に対し、がんの病態、治療方法等がん診療及びがんの予防・早期発見等に関する一般的な情報を提供することと定められています。本市においては、国立病院機構四国がんセンターが「都道府県がん診療連携拠点病院」に、愛媛県立中央病院、松山赤十字病院が「地域がん診療連携拠点病院」に松山市民病院、済西会松山病院が「がん診療連携推進病院」に指定されています。
3.保健医療関係者の責務として、がんの予防に寄与するため、市が実施するがん対策に関する施策に協力することを求めています。
(事業主の役割)
第6条 事業主は、労働者及びその家族(以下「労働者等」という。)が、定期的にがん検診を受けることができる環境の整備に努めるものとする。
2 事業主は、労働者ががんに罹患し治療や療養が必要となった場合であっても、雇用の継続に配慮するとともに、治療と職業生活の両立に当たっては、労働者の症状や業務内容に応じて適切な就業上の措置や配慮を行うように努めるものとする。
3 事業主は、労働者の家族ががんに罹患し看護が必要となった場合であっても、労働者が当該家族を看護することができる環境の整備に努めるものとする。
[解説]
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)では、労働者に対して医師による健康診断を行わなければならない(同法第66条第1項)とされています。事業主は、保健指導や健康診断の実施を通じて、雇用する従業員の健康保持に重要な役割を担っていることから、従業員に対し、がん検診の受診を勧奨することや検診のための休暇を与えることは、事業主にとっても有意義なことです。また、たとえがんになったとしても、勤務時間の見直しなどといった負担軽減策を講ずることにより、安心して治療や療養、家族の看護が続けられる環境づくりを事業主として可能な範囲で努めることは、がん対策を社会全体で進めていく上で大切です。
※この規定については、「期待的な条項とするのか。条例としての現実的役割の論理的明確化が必要ではないか。」という意見がありました。
(がん予防の推進)
第7条 市は、喫煙、飲酒、食生活、運動その他の生活習慣が、健康に及ぼす影響についての啓発及び知識の普及その他のがん予防のために必要な施策を実施するものとする。
2 市は、受動喫煙防止のために必要な施策を講ずるものとする。
[解説]
科学的根拠に基づくがん予防として、喫煙(受動喫煙を含む)・過剰飲酒・野菜果物不足、塩蔵食品の過剰摂取、低身体活動等その他の生活習慣がリスク因子と考えられているため、その対策を実施します。
(がん検診の質の向上と受診率の向上)
第8条 市は、がんの早期発見に資するよう、保健医療関係者と連携し、がん検診の質の向上を図るために必要な施策を講ずるとともに、がん検診に関する普及啓発その他のがん検診の受診率の向上を図るために必要な施策を講ずるものとする。
[解説]
がん検診は、がんの早期発見、早期治療に繋がり、がんの死亡者を更に減少させていくためには、がん検診の受診率向上及び精度管理の更なる充実が必要不可欠であるため、その対策を実施します。
(がん医療に関する情報の収集及び提供)
第9条 市は、市民が、がん医療及びがん患者等の支援に関する情報を得られるよう、県、保健医療関係者等と連携し、情報の収集を行うものとする。
2 市は、がん患者等が、必要な支援を受けられるよう医療機関等の関係機関と連携を図るとともに、医療機関等が設置する相談窓口を積極的に周知するものとする。
[解説]
がんと診断された患者や家族は、治療方法や支援制度等不安を抱えているため、がんに関する正確な情報を求める声は多く、多くのがん患者・家族等が必要な情報にたどりつくことができていないことが課題となっているため、その対策を実施します。
(がん患者等に対する支援)
第10条 市は、県、保健医療関係者等と連携し、全てのがん患者の療養生活の質の維持向上及びがん患者等の精神的な苦痛、社会生活上の不安等の軽減に資するよう、必要な施策の実施に努めるものとする。
[解説]
小児がん(15歳未満のがん)、AYA世代のがん(15歳〜30歳前後の思春期・若年成人のがん)、女性特有のがんに対する施策をはじめ、全てのがん患者の療養生活の質の維持向上及びがん患者等の精神的な苦痛、社会生活上の不安等の軽減がはかられるよう、必要な施策を実施します。
(在宅医療・緩和ケアの充実)
第11条 市は、医療機関及び介護サービス事業者等と連携し、在宅医療を希望するがん患者等に対し、がん患者等の意向を尊重し必要な施策の実施に努めるものとする。
2 市は、県及び保健医療関係者と連携し、緩和ケアの充実を図るため、必要な施策の実施に努めるものとする。
[解説]
がん患者の多くは、治療に伴う副作用・合併症等の身体的苦痛に加え、がんと診断された時から不安や抑うつ等の心理的苦痛を抱えています。また、その家族も、がん患者と同様に様々な苦痛を抱えています。その人らしく、可能な限り質の高い生活を送ることができるよう、市が在宅における治療・療養など様々な場面で切れ目なく支援していけるよう、また緩和ケアの充実を図るために必要な環境の整備に努めます。
(骨髄移植等の推進)
第12条 市は、白血病等の血液がんに対し、保健医療関係者と連携して、骨髄移植、臍帯血移植等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
[解説]
小児がんや血液がんに対し有効な治療法である骨髄移植や臍帯血移植等を推進するため保健医療関係者と連携し必要な施策を講じていきます。
(就労支援)
第13条 市は、がん患者の雇用の継続に資するよう、事業主に対するがん患者の就労に関する啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
[解説]
がん患者の就労をはじめ様々なケースについて、不当な扱いを受けないよう、事業主や市民に対してがん患者の就労に関する啓発及び知識の普及を行います。
※この規定については、「行政側としてどこまで雇用関係に関われるのか。理論を明確にしておくことが必要ではないか。」という意見がありました。
(がんに関する教育の推進)
第14条 市は、子どもが健康と命の大切さについて主体的に考えることを基本にがんに関する知識及びがん患者への理解を深めることができるよう、小中学校におけるがんに関する教育の推進のために必要な施策を講ずるものとする。
[解説]
第3期がん対策推進基本計画や学習指導要領改訂に伴い、小・中学校における取組みが重要度を増しています。授業内容はもとより、発達段階や生徒・児童に対する配慮、外部講師との連携などを考慮し実施します。
※この規定については、「小中学校におけるがんに関する教育の推進のために必要な施策を講ずるものとする。」の文言を削除してはどうかという意見がありました。
(財政上の措置)
第15条 市は、がん対策に関する施策を充実させるため、財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
[解説]
がん対策に関する施策を計画的に実施するためには、財政上の裏づけが必要であり、人員配置も含めた予算措置は必要です。
※この規定については、「予算を伴うものは理事者と協議が必要である。」、「予算要求における裏付けを本当に得ることができるのか。予算という制約的なものに対して、この条例がどこまで関われるのか明確にするべきだ。」、「議員には予算の提案権がないことからもこの規定は必要ではないか。」などという意見がありました。
(議会への報告)
第16条 市長は、毎年1回、本市のがん対策の実施状況について、議会に報告するものとする。
[解説]
市議会は議決機関、市長は執行機関として、がん対策の実施にむけて全力で取り組むべきであり、対策事業の実施にあたっては年1回実施状況を報告します。
※この規定については、「議会の責務は、行政のチェック機能であり、施策に対する責務は不要だと思う。従って、議員の質問で対応できるだけに、議会への報告は不要ではないか。」という意見がありました。
(規則への委任)
第17条 この条例の施行に関し必要な事項は,市長が別に定める。
付 則
この条例は,公布の日から施行する。
※その他全体として、以下のような意見がありました。
・議員提案条例だけに、全議員が理解し合うことがまず大事ではないか。
・条例に規定したことが現実問題として行政の施策の中で本当に具体化が可能か、その裏付けが必要ではないか。また、期待的な規定としてもどこまで実現可能なのか裏付けも必要ではないか。
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